記事の要約
- NHK「100分de名著」ブックス最新刊が発売
- アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を解説
- 幸福獲得のための実践哲学書を読み解く
NHK「100分de名著」ブックス最新刊でアリストテレスの『ニコマコス倫理学』を解説
株式会社NHK出版は、2024年8月26日に山本芳久さんによる『NHK「100分de名著」ブックス アリストテレス ニコマコス倫理学 「よく生きる」ための哲学』を発売しました。この書籍は、NHKの人気番組「100分de名著」のテキストに大幅な加筆を行い書籍化したシリーズの最新刊となっています。東京大学大学院教授の山本芳久さんが、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの思索の記録である『ニコマコス倫理学』を読み解いていきます。
アリストテレスは「万学の祖」と呼ばれ、天文学や生物学、詩学、政治学、論理学、形而上学など様々な分野の学問の基礎を確立した人物です。『ニコマコス倫理学』は、彼が「倫理学」という学問を歴史上初めて体系化した書物であり、幸福とは何かを多角的に考え、それを獲得する方策を説いた実践の書となっています。山本氏は、この書物が現代人にとっても重要な「正義」や「欲望」、「生き方」や「友情」などについて考えるための指針となると解説しています。
本書では、アリストテレスが考える幸福の定義や、それを達成するための「徳(アレテ―)」の概念、人間同士の絆である「友愛(フィリア)」の分析などが詳しく解説されています。アリストテレスによれば、幸福とは人間固有の能力を発揮することであり、そのためには外的な幸運を活かすための内的な力である「徳」を身につける必要があるとされています。また、この「徳」は習慣化によって性格となり、身につけることができるという考えも紹介されています。
本書の構成は、「はじめに」から始まり、「倫理学とは何か」「幸福とは何か」「徳と悪徳」「友愛とは何か」という4つの章で『ニコマコス倫理学』の内容を深く掘り下げています。さらに、ブックス特別章として「アリストテレスとトマス・アクィナス ~『ニコマコス倫理学』から『神学大全』へ」が加えられ、中世キリスト教哲学への影響も考察されています。最後に読書案内とおわりが付され、読者の更なる学びをサポートする構成となっています。
著者の山本芳久氏は、1973年神奈川県生まれの東京大学大学院総合文化研究科教授です。専門は哲学・倫理学(西洋中世哲学・イスラーム哲学)、キリスト教学であり、多数の著書を執筆しています。本書は、彼の豊富な知識と洞察力によって、古代ギリシャの哲学を現代に生かす方法を提示しているといえるでしょう。
『NHK「100分de名著」ブックス アリストテレス ニコマコス倫理学』の詳細情報
項目 | 詳細 |
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タイトル | NHK「100分de名著」ブックス アリストテレス ニコマコス倫理学 「よく生きる」ための哲学 |
著者 | 山本芳久 |
発売日 | 2024年8月26日 |
定価 | 1,210円(税込) |
仕様 | 四六判・160ページ |
ISBN | 978-4-14-081972-2 |
ニュースを読んでみた所感
アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を現代的な視点で解説した本書の発売は、古典哲学の知恵を現代社会に活かす貴重な機会を提供していると感じました。特に、幸福の定義や徳の概念、友愛の分析など、現代人にとっても重要なテーマを扱っている点が注目に値します。NHKの人気番組をベースにしていることで、難解な哲学書をより親しみやすい形で学べる点も評価できるでしょう。
今後、このようなシリーズで他の古典哲学書も取り上げられることを期待します。例えば、プラトンの『国家』やマルクス・アウレリウスの『自省録』など、現代社会にも通じる洞察を含む作品の解説があれば、より多くの読者が古典哲学に興味を持つきっかけになるかもしれません。また、オンラインでの補足講義や読者同士が議論できるプラットフォームの提供など、本の内容をさらに深く理解するための付加的なサービスがあれば、より学びが深まると思われます。
古典哲学の現代的解釈は、私たちが直面する複雑な社会問題や個人の生き方の指針を考える上で、非常に有益な視点を提供してくれます。本書を通じて、多くの読者がアリストテレスの思想に触れ、自身の人生や社会のあり方について深く考えるきっかけになることを期待します。また、このような取り組みが継続され、哲学が日常生活により身近なものとなり、社会全体の知的水準の向上につながることを願っています。
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