記事の要約
- 海岸清掃によるストレス・気分の変化を調査
- 血糖値低下やストレス軽減効果を確認
- 清掃活動が健康増進に有効な可能性を示唆
海と日本プロジェクトが海岸清掃の健康効果を実証
海と日本プロジェクトin新潟実行委員会は、新潟医療福祉大学健康スポーツ学科スポーツ生理学ラボ佐藤大輔教授と共に、「海岸清掃によるストレス・気分の変化」について2023年10月から2024年3月にかけて実証実験を行い、2024年8月に調査結果を発表しました。この実証実験は、日本財団が推進する海洋ごみ対策プロジェクト「海と日本プロジェクト・CHANGE FOR THE BLUE」の一環として実施されたものです。
実証実験は2つの段階で行われ、第1段階では42名の参加者を対象に、アスファルトと海岸での清掃活動前後で6項目の数値を比較しました。測定項目には、ストレスレベル、血糖値、認知機能(抑制機能)、膝・腰への負担感、運動強度、心拍数が含まれており、これらの変化を詳細に分析しています。実験結果から、海岸清掃は血糖値やストレスを低減する活動になりうることが示唆されました。
第2段階の実験では、清掃活動と2種類の運動(自転車エルゴメーターとトレッドミルウォーキング)を比較し、それぞれの効果を検証しました。この実験には15名が参加し、ストレスレベル、血糖値、抑制機能、膝・腰の負担感、運動強度の5項目について測定が行われました。結果として、海岸清掃は腰への負担感や運動の疲労感が低いという特徴が明らかになりました。
これらの実証実験の結果から、清掃活動は特に高ストレスレベル、高血糖、低抑制機能の人に改善効果が見られ、健康増進に有効な身体活動・運動の一つになりうることが示されました。研究チームは今後、シニア世代を対象に清掃活動が介護予防やフレイル予防に有効であるかどうかをさらに検証していく意向を示しています。
海と日本プロジェクトin新潟実行委員会は、この研究結果を通じて、環境保護活動が単に地域の美化に貢献するだけでなく、参加者の健康増進にも寄与する可能性を示しました。今後は、この知見を活かし、より多くの人々が海岸清掃活動に参加するきっかけとなることが期待されています。さらに、この取り組みが環境保護と健康増進の両立という新たな社会貢献モデルとして広がっていく可能性も考えられます。
海岸清掃の健康効果まとめ
ストレスレベル | 血糖値 | 認知機能(抑制機能) | 腰への負担感 | |
---|---|---|---|---|
海岸清掃の効果 | 高ストレス者で低下 | 有意な低下 | 低機能者で向上 | 最も低い |
対象者 | ストレスレベルの高い人 | 血糖値の高い人 | 抑制機能の低い人 | 全参加者 |
他の運動との比較 | 同等 | 同等の効果 | 同等 | 優位性あり |
ニュースを読んでみた所感
海岸清掃活動が健康増進に効果があるという研究結果は、環境保護と個人の健康という二つの重要な課題を同時に解決できる可能性を示しており、非常に興味深い発見だと感じました。特に、高ストレスや高血糖の人々に効果が見られたという点は、現代社会の健康問題に対する新たなアプローチとなる可能性があります。この研究は、日常的な社会貢献活動が個人の健康にも直接的な利益をもたらすことを科学的に示した点で画期的であると言えるでしょう。
今後は、この研究をさらに発展させ、年齢層や健康状態の異なる多様な参加者を対象とした長期的な調査が行われることを期待します。特に、シニア世代を対象とした介護予防やフレイル予防の観点からの研究は、高齢化社会における重要な知見となる可能性があります。また、海岸清掃以外の環境保護活動についても同様の効果が見られるかどうかを検証することで、より広範囲な社会貢献活動の健康効果を明らかにできるかもしれません。
この研究結果を踏まえ、地方自治体や企業が健康増進プログラムの一環として環境保護活動を積極的に取り入れることを提案したいです。例えば、健康保険組合がウォーキングイベントを開催するように、定期的な海岸清掃活動を組織することで、従業員の健康管理と企業の社会的責任を同時に果たすことができるかもしれません。このような取り組みが広がれば、個人の健康、地域環境の保全、そして社会全体の持続可能性の向上という多層的な利益をもたらす可能性があるでしょう。
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